長い休日

とにかく書く。

胚芽の頃(仮)

 

ひとひらの 涙が雪と 結ぶ夜

ガムを噛みつつ 走る一号線

 

予感だろうか。忘れていた感覚がふと戻ってくる時がある。今朝、カーテンに見つけた米粒を見て、

 

カーテンの 裾に見つける おむすびの

はぐれた米粒 5年目の朝

 

なんて言葉が自然と連なってくる。

そんな朝、めずらしくポストには一葉の手紙。年賀状くらいしか届かないのになぁ、なんて思いつつ、

 

便りには 少し早めの 「来年も…」

見据えて越すが 冬のくまさん

 

“冬のくまさん” って、他に冬眠する動物が思い浮かばなかっただけなのだけれど、それでも格好がつかなさすぎるだろう。

そう思い、手紙を読む。

 

断たぬ歯は 豆腐にもろく カマキリの

卵に刃を立つ 祖父がまほろ

 

差出人は不明。ただ、こんなことを書く知り合いなど1人しかいない。かつて去った故郷、ユートピアにも準えられた町、今は遠く淡い記憶のなかだけに存在する葬られた町…そんな場所から送られてきたというのか。

行ってみるべきか。自ら巻き上がる感情の渦に戸惑いながら…行かねばならないだろう。

 

巻き上がる 嵐を躱し ユートピア

太もも撫で上げ いま走り出せ

 

そして今、寒い夜を走っている。

 

ひとひらの 涙が雪と 結ぶ夜

ガムを噛みつつ 走る一号線

 

思い出すのは、若く青い季節だ。何一つ不自由なく、ただただ人生を謳歌していた時代。

 

彩りは 覚める夢より 鮮やかに

恋する十五は 人生の花

 

父親は言った。

「どんなに拙くても詩を残すことは素晴らしいことだ。その季節の感情がリアルに戻ってくる。だから、可能であれば書くべきだ」

他の兄弟は無視していたが、私は真に受けて書き続けた。元々の性分に合っていたのだろう。もしかすると父親に褒められるのも嬉しかったのかもしれない。

そしてある日、わたしは会ってしまった。

 

美しき 旋律にただ 立ち尽くし

女神薙ぐ音に わたし乱れて

 

「少し難しいが、君は見つけたんだね」その言葉を思い出す。わたしはミューズ…つまり彼女を見つけだのだ!彼女を見つめると言葉が湧く!彼女を見つけると言葉を尽くして讃えたくなる!

一眼見たときは、

 

惚れるまま 凍てつく坂を 直滑降

吹雪に塗れて 永久凍土へ

 

話しかけるときは、

 

トリックを 見破りたいが 見透かされ

魅せられて踏む 囚われの恋

 

ようやく近づいて、ノートを貸すようになって

 

貸したはずの ノートにつっ伏す 横顔に

ホクロを探す 昏き放課後

 

なんてのも作ったっけ。

「で、これはなんなの?」

「え、えーっと、わたしが書いた短歌だけど…」

「へぇ〜、こういうのが好きなんだ?」

「あ、でも別に、自分のためというか…」

「ふーん…

 

龍に鈴 つければ雨が いつ降るか

わかると笑う 傘に雨音

 

…意外とメルヘンなのね?」

「いや、たまたまそうなっただけで、いつもは違うんだけど…」

「あ、これも?

 

パソコンも 叩けば直ると

BANG!BANG!BANG!

ポリプロピレン パオンパオン

 

…何これ?」

「これは、うちの兄貴が壊れたパソコンをぶっ叩いてて『何やってんの?』って聞いたら『直してる』っていうから『はぁ?』と思って、ただその横では妹がビニール袋を風船にしてガシャガシャ遊んでて…で、気がついたらこうなってた…」

「なにそれ」

「別に良いでしょ、返して!」

「えー、仕方ないなぁ…。でも見てみたいなぁ、もっと、きみの作品。今度行っていい?」

 

そして夏休み。書くに恥ずかしい気持ちは、詩の中にだけ残しておく。

 

いすを寄せ ページをめくる 指にふれ

かえす笑顔に 揺れる風鈴

 

顎先に ふれこそばやし ストレリチア

かおる汗あり たつ肌もあり

 

枕元 伏せる獣の 寝息にも

くしゃみがまじり むずがゆき鼻

 

なんと素晴らしい思い出たちだろう。これだけで生きていけるような気がしてた。でもそんな順風満帆には行かないのだ。

 

乗る波に からだ掬われ まっ逆さま

ただ青は青 地球は丸い

 

ユートピアと謳われた生まれ故郷は、住む人々の肉体労働や雑務を可能な限りアンドロイドに任せるという面において非常に先駆的で合った。そして、さらにこだわっていたのはただ有能なだけでなく、美しさも求められていたことだ。そのアンドロイドのデザインを務める人こそこのユートピアの権威であり、偉い王となれる。

 

洗練は 飽かずに探す 翅脈にも

飛んで帰り着く 秋津島にも

 

パリから帰ってきた新たな王はあろうことかわたしの美しきミューズをあっさりと奪い去っていった。それがこの国の王であり、権威であり、権力であった。抗うことなどできないこと…そういうものがあるのだ。

 

王の灰 融化して履く ガラスにも

裂けるザクロは より赤くあれ

 

わたしはこれを書いたっきり、なんの言葉も出なくなってしまった。おそらく、友だちと偽って会うことだって出来たかもしれないし、もっと気楽に手紙だって送れたはずである。しかし、この呪いのような、嫉妬のような、自分でもよく形がハッキリしないままぶつけたこの歌を送ったっきり、手紙には今の生活を書き綴るだけの単調なものに変わってしまった。

その一方で、彼女はというと頻繁に歌を書き、手紙に寄せてくれた。

 

王子待つ 暇はないので 襟ただし

瑞々しき桃 齧り征く夏

 

まだ少し浮かれている頃の歌かな。

 

御々名得し この身に掛かる 威圧ごと

血潮滾らせ 回すダイナモ

 

これは正式に王家に入ったときの歌だろうか…。いま思えば、この頃から彼女の思惑は少し感じていたかもしれない。

 

ひさかたの 閃きはネガ 掌に

織りなすポジティブ とっておきの魔法

 

不意のおばけが 怖くなくなったのは

背を越すものも 多くなったから

 

…よからぬことを考えているのかもしれない。もしかしたら違うかもしれない。それが合っているのかもわからないけれど、少しずつわたしは準備をしていた。

 

耐えうるか 引くエンジンは なお熱く

奮える声に 愛しみを聴け

 

いまだに言葉は出てこないままだ。

しかし、時間がないことだけはわかっている。

もう次はない、もう次はない、そう焦れば焦るほどに言葉は出てこない。声に出ない。

そしてその日はやってくる。

 

大海を 飲み干し今日より 高くあれ

在る種を誦じ より深く知れ

 

この手紙を受け取ったとき、わたしはこの町から出ることにした。よからぬことを企んでいる。そして、逃げろと言っている。しかし、言葉は出ないまま…ただ、その裏には

 

王の灰 融化して履く ガラスにも

裂けるザクロは より赤くあれ

 

そう書き綴られていた。出した歌が返ってきた。バイクに乗り、急ぎ町を出る。一号線に乗ろうというとき、町中のアンドロイドが停止していたのが見えていた。人々は不思議がって近づいている。

爆発音はその直後に聴こえた気がした。

 

オハヨウ!と ガール大声 わたる風

去る踵には 起爆した町

 

ひさびさだからだろうか、ただでさえ拙い歌がさらに拙く感じる。続くには、

 

熱をもて 煌めき自在に 飴細工

焦がれる目には ビターな純情

 

いつかこれを渡さなきゃ…そう思って5年が経ってしまった。結局のところ、わたしは前に進めていたのだろうか…そう思いながら暗闇に包まれたかつてのユートピアを進む…彼女を探しながら。

 

電極の 南北を繋ぎ 夢先へ

照らす東西 声高らかに

 

そこらじゅうにはガラクタと化したアンドロイドたちが散らばっていた…いや、もしかすると人間も混ざっているかもしれない。夜でよかった。そう思った。ここは地獄…そんな場所にいるわたし。

 

裁き待つ 時こそ惜しめ 釣られゆく

糸すがる人の 先の蓮池

 

やがて、煌々と輝く宮殿が現れる。かつて、わたしがどうしても行けなかった場所。おそらく、彼女はあそこにいる。

 

天啓く 太陽高く あればこそ

影より長く 集う人あり

 

そこはこの地獄へと様変わりしたユートピアのなかで唯一輝きを放っている場所だった。宮殿は豪華絢爛な作りで、その分厚い壁を抜けて聞こえる、これまた華美な音楽、なかでは舞踏会が開かれていてさまざまに着飾った人々が踊っている…いや、みんなアンドロイドなのだけれど、しかしわたしがいた頃よりもさらに洗練されていた…いや、わたし好みに変えられていたのかもしれない。

やがて、奥から彼女が現れる。

「おひさしぶり、元気してた?手紙もなにも返ってこないから、結構大変だったのよ?」

「それは申し訳ない…」

「でもいいの。きみは来てくれた。それで十分。

見て!凄いでしょ!これ全部、私が作ったの!もちろん、あなたを迎え入れるため!

 

装いに 漬けて干しては 染め上げる

酸いも甘いも 世界こそ私

 

そんなところかしら!」

「うん…凄くいいと思う」

「でね、ここできみと私は永遠に過ごすの!このユートピアで」

「永遠?」

「そう、永遠!」

そういうと彼女はドレスの裾を捲し上げた。そこに在ったのは生身の人間ではなく、機械の身体だった。

「ずっと寂しい思いをさせてきたと思うの。でも、もうそんなことはさせない。これを見て!」

そこに居たのは5年前の私の形をした “わたし” だった。

「これは?」

「これは、“きみ” だよ。いろんなデーターを入れて、作り上げたんだけど、わたしはせっかくだから今のデーターも入れたいと思って!」

「…そんなことをして、わたしがあなたを嫌いになるかもとは思わないのかい?」

「もし嫌いだったらそもそも来ないわ」

「そっか…」

わたしは5年前の自分と対峙している。あの輝いていた頃の自分を見つめながら、あれが一生続くのならそれでいいと思えた。

「データーを移行したら、そのあとこの肉体はどうなるんだい?」

「もちろん」

そう言って彼女は拳銃を見せる。

「大丈夫、全ては一瞬よ。さぁ、目を合わせて」

わたしはわたしと目を合わせる。

目を通じて、わたしの記憶が、データーとして渡されていくのがわかる。わたしが空っぽになっていく。空っぽになった身体はロボットとなにが違うだろう?それは生きているだけ無意味で、生きているだけで浪費するコストのかかる、ムダなゴミ…。

「ふふふ。もう大丈夫よ。」

ぼくは目覚めた。

かつてのわたしは、涙を流していた。空っぽの体と虚ろな目、全て奪われたのだ、ぼくに。そして渡される拳銃。ぼくがやるのだ。

 

心尽きて 悔しさに涙 溢れても

きみは空への 羽根を掴んだ

 

「上出来ね。あとはここで一生を…いや、永遠を謳歌するの!」

「いや、ここで終わりだ」

ぼくは拳銃を彼女に向ける。

「なぜ弾が二つ入っているんだ?」

彼女は答えない。ただ笑っている。

 

熱をもて 煌めき自在の 飴細工

焦がれる目には ビターな純情

 

「なにそれ?」

「伝え損ねた歌だ」

「まるで別れのようね」

「それこそ、永遠の?」

彼女は答えない。ただ笑っている。

 

答えざる 沈黙は死と言い 撃鉄を

引き香る火煙 東雲と消え

 

朝になる前にここを出たかった。数々の試作品の上にぼくがいる…そう自覚するのが怖かった。しかし、実際のところ死んでいるように見えていたいくつかのアンドロイドはスイッチが切られていただけで夜明けと共に動き出そうとしていた。そしてぼくを見つけて手を振っている。歓迎しているのかもしれない。でもぼくは去るのだ。でも一目散に逃げたあの時とは違う。

 

ふりかえす 手のぬくもりを 握りしめ

「ぼくは変わった。」もう忘れるな

 

きっと、あのユートピアは永遠に存在するのだと思う。スペアなんていくらでも作れるだろうし、もしかすると、もともとその予定でガラクタたちは試作されていたのかもしれないし。ただ、もう訪れるものも居なければ、あの場所を抜け出すものも居ないだろう。

 

月光の さやけき空に 狼は

ただ咽び泣く それもまぼろし

 

全部、消えていくさ。そしてぼくは消えていくものを心に秘めたまま暮らしていく。

 

ひとひらの 涙が雪と 結ぶ夜

ガムを噛みつつ 走る一号線

 

京都、吉田山の上から。

 

京都に旅に出ている。

 

もとい、気分としては帰っている気分なので、旅とは言わないのかもしれない。

 

ただ、良い言葉が見つからないので、旅とする。

 

去年まで、何もせず大学で学んでいた場も、何かしら新しくなっていたり、無くなっていたりするのが忙しい。

そのような中、前々から行こう行こうと思いながら、在学中に行かなかった場所は数多くある。

不思議な話だが、当時はびっくりするほどお金がなかったのだ。

 

お金のない大学生は基本的に勉強するしかない。

 

というわけで、イソイソと勉強した結果、東京へ出る羽目になったのだが、帰ってみるとやはり京都は都合が良い。

 

何が都合が良いかといえば、街のスケール感である。

 

とにかく、東京は広い。

行きたい場所に行くと、そこしか行くところがない。加えて、あるのはファストフード店と流行りの食べ物ばかり。まあ、時々は面白そうな店を発見するけれど、街一つに一つの個性と大半のレディメイドというのが、いたるところである。

 

正直非効率。

 

その点、京都は基本歩けば着く。

確かに、狭いが一日に目的があれば、歩きあるいは自転車で京都中を駆け巡りすべからく目的を達成できる。

もしくは、今日は運がなかったと落胆する。

 

独り住まいには、非常に都合が良い。

 

無論、お金があれば。

 

吉田山の喫茶店に話を戻せば、隣の席のおっさん(敬称)がシャンディーガフを飲んでるのが心底羨ましい。

小生はカフェオレであった。

三時のおやつという甘言に負けた形(ケーキセット)であったが、今日のように日が暖かで、少し汗ばむような日であれば、お昼から飲むお酒も良かっただろうと思う。

 

ここら辺の緩さは、在学中に住んでたから出る発想だろうか。そんな気がする。

 

ただいま夕方に差し掛かる山の中は、人のしゃべりが心地よい。

山というか、岡といっても良いだろうが、京都は少し街中を離れれば、割と静かなのが面白い。ああも、鴨川が静かなのも面白い。人の話がよく聞こえる。でも、聞いてない奥ゆかしさ。

 

おっさんはシャンディーガフ二杯目。ツツジはピンク。今日の服は赤。取り巻くは緑。「ゆとり」とはよく色を見る事なのかもしれない。

 

別にそうじゃなくても良い、お金があれば。

氷が溶けて、味の分からなくなった紅茶ですら。

 

突然の相手の近くでヒマなので、書いてみる。

 

書き始めようと思って、カレコレ20分経ってることに、驚きつつ、喫茶店で膠着(アイス)飲むなんとも言えない無駄な時間。

 

第一、昨日休日(深夜勤なので関係ない)今日平日で出勤、てどんな心持ちなのだろう。

 

分からないから、紅茶を飲む。

 

ちなみに、知らない駅なので、誰が普段からいて、誰がいないのかは分からない。いてもいなくても一緒で、店の人にとっては客ということだけが確かである。

 

ただ、隣の人は旅行者らしい。

 

小生は、どこへ行っても旅行者気分だが。

 

第一、自分の居場所なんて知ったことかと思う。

故郷、ふるさとなんて言える、自分が安心できる場所もないし。

どちらかというと、知らない土地に一人でいた方が安心する。

 

極論、友達もそんなに欲しくない。

が、旅行先では人に会いがち。

 

普段は飲み会の類は大の嫌いである。

でも、ときどき会える友達とは滅茶苦茶飲みたくなるタイプ。

 

「旅先飲みガチ勢」とでも呼んでほしい。

その道ではプロと呼ばれてもいる?

 

そういう意味では、友達を作るのは上手い方かもしれない。

少ないけど。

 

ちなみに、個人としては、狭くて浅い関係だと思ってる。

てか、深いってどこまで行けば良いか分からないから、苦手だ。結局は自己満足だろうと思う。いや、自己満足で何が悪いと言われれば、返しようがないので、なんとも言えないから、それはナシで。

だから、どこまで行っても浅いのだ。

これを勝手に、「大陸だな」理論とも行ってる。

 

友だち漁場としては程よいという意味で。

 

「ほどよい」というのは難しい。

昔の言葉で言うと、「中庸」とでも良いのだろうか。バランスが良いとでも言うのだろう。

難しい。

 

僕はとにかく、少なめにしたあと、味を整える。

「味を調える」って言う言葉はいい。

褒めてやってもいい言葉だな。

 

そういう意味では、趣味「味を整える」というのが、小生にはピッタリだ。

生活の味を整えることに味を占める。

 

これもまた自己満足。

 

以上、10分の出来事。

 

相手が来るまで、あと10分。

小秋日和

 

小春日和が、冬先の暖かい日を指し示すように、春の日に、気持ち寒く、なお通り雨が降るような日を「小秋日和」と名付けたし。

 

まあ、そもそも「秋」という季節が曖昧で、有るかないか定かではない。小生は京都に住んでいた時に初めて「秋」の実感を得た。

広島には、「秋」と呼ばれる季節は特になかったように思う。「安芸」だけど。

東京に四季はない。

 

四季が “ある” というのは、あくまで近畿圏の話である。考えれば当たり前で、日本の文化の多く、かつ基礎的なものは京都や近畿圏で整えられたのである。反対に言えば、他の地域は否が応でもズレる。それをスタンダードと言い張るのだから、まあよくも今まで騙してくれたものである。

 

ただ、ともすると小秋日和は、東京特有のものかもしれない。

京都は盆地寒暖差が激しいため、かえって「寒の戻り」というのがあまりない。簡単に言えば、「昼暑夜寒」が春、「昼暑夜暑」が夏、「昼寒夜暑」が秋、「昼寒夜寒」が冬、と言った具合。ちなみに気持ち春が長く感じるのは、「さっさと冬を終わらせたい」という人間の気が早いのもあるが、夜の空気が温まるのに時間がかかるからだと思う。反対に、夜は冷えやすいので、秋は気持ち短い。ただ、意地でも冬と認めたくないので、結果トントンまで人間が持って行ってるといえよう。

人間とはいじらしい生き物である。

一方、東京は比べて北に位置するためか、冬が長い。あと、海に面していて風が強いからか、空気は暖かいのに、風で寒いみたいな感覚がある。

気持ち薄着、でもマフラーはつけとこう。よくわからんけど、通り雨が来る。ああ、今日は暖かかった日だったのか。もう夜が来て寒いけど。

そんな日が「小秋日和」。

 

とはいえ元も子もなくすれば、小生がただ秋が好きというだけなのかもしれないが、いじらしいとでも思ってくれ。

 

ベストアルバム論、その2の7。

 

お、終わりが見えてきた!

かけるぜ!スパート!

 

8. さかさまの空

本人たちが出演しない、連続ドラマ小説『梅ちゃん先生』の主題歌にもなった、菅野よう子作曲のポップチューンは、43 位と順位は低め。だがこの時期のシングルとしては唯一のランクイン。

さて、サラッと紹介したのだが、実の所7曲目と8曲目の間には4年間くらい飛ばされている。まあ、アンケートによる結果なので仕方ないのだが、もちろんこの間に何もなかったわけではない。というより、この間には震災と、それを受けての被災地支援、加えて北京公演と実際にはかなり忙しかったと言っても良い。ただそれはかなり外向けの活動だったと言っても良い。

さかさまの空』も、もちろんドラマのタイアップがあるので “外向け” ではあるけれど、個人的にはスタンドマイクでのパフォーマンスを含めて、ファンのところに “帰ってきた” ような感がある。それは、この曲が入っている『GIFT of SMAP』でよりはっきり示されることとなる。

 

9. 手を繋ごう

GIFT of SMAP』ツアーの本編ラストを飾った楽曲は、前山田健一作詞作曲の、手近な平和ソング。順位は 32 位で、カップリング曲としてはこのアルバムでは最後の収録曲となる。まあ、この曲以降、両 A 面という形が多くなるのも原因の一つなのだけれど。

世界に一つだけの花』以降、SMAPの武器としてこういう平和ソングを度々発売したのだけれど、それはもう一方で縛りでもあった。そして、それを乗り越えるために、あえて『世界に一つだけの花』と同等の一体感を得られる曲を求めるようになったのではないかと思う。そしてその答えが、この曲とライブでのパフォーマンスだったのではいかと思う。

そしてその結果『GIFT of SMAP』ツアーでは、『世界に一つだけの花』を歌うことなく、完遂することとなった。この『世界に一つだけの花』がなくてもSMAPをやれるという確信が、『Mistake! / Buttery』以降のシングルに影響を与えているのだと思う。

ちなみに、A面は『Moment』で、こちらはアルバム未収録。オリンピックのテーマソングにもなったのにもかかわらず。

 

10. gift

アルバム『GIFT of SMAP』のリード曲は、またもや菅野よう子作曲のポップチューン。順位も 24 位と、シングルの『さかさまの空』より上。

さて、『GIFT of SMAP』は菅野よう子が実質的に全体のプロデュースをしていると言っても過言ではないアルバムである。それは、収録シングルとアルバムリード曲、さらにオープニングとエンディングのテーマを書いていることからも明らかである。

ただ、その一方で強烈な個性をもつアーティストにトータルプロデュースを委ねても消えない “SMAPらしさ” が発揮されているからこそ、このことを可能にしているということを見逃してはならない。むしろ、香取慎吾がこのタイミングで “SMAPらしさ” をつかんだと言っても良いだろう。それは、どこまで世間の “SMAP像” を保ったまま、同時にそれを壊すことが可能になるのかということへの挑戦である。

これは、『世界に一つだけの花』で固定された “SMAP像” の新たな乗り超えを踏み出す第一歩とも言える。

 

 

11. 前に!

先ほどはリード曲だったけど、こちらは実質的なラストを飾る力強いファンファーレ。 14 位という非常に高い順位で、結構驚く。

実はこの曲、もともとシングル候補だったらしい。と言っても木村くんが昔ラジオで言ってたことのうろ覚えで裏は取れてないのだが、せっかくいい曲なのでアルバムに入れさせてもらったとか。

ちなみにその競合相手が、『Moment』である。ベストアルバムとの兼ね合いと、シングルの評価が一致しないケースとしてみれば、結構面白い。

ちなみに、Disc 2の『ススメ!』と曲名は似通っているが、特に関連性はない。

 

12. CRAZY FIVE

「FIVE シリーズ」最後の楽曲は、「なーにー?」の掛け合いも楽しいダンスチューン。 作詞作曲編曲から楽曲構成、果てはダンスのフリや演出まで、「This is 中居」印の、 圧倒的アッパーチューンでもある。順位も 5 位で、人気の高さを伺わせる。

とにかく「聴いてくれ!」の一言。この曲にSMAPの全てがは詰まっている。

ちなみに、作ったのこそ中居くんだが、依頼したのは香取くん。タイトルも確か香取くんで、そこからインスピレーションを得たとかという話ではなかったか。どうも、うろ覚え。

 

13. Battery

久々のイケイケのダンスチューンは、全編英語詩の EDMチューン。19 位という高い順位の裏側には、 USJ 効果もあると思われる。

個人的に、リアルタイムで聞いた時に、「カッコいいSMAPやーー!」と、ほんとに興奮した。両A面の『Mistake!』もそうだが、こっからギアの入れ直しがハンパないというか、絶対今まで出し惜しみしてたやろ!と思わず突っ込みたくなるほど、カッコええんじゃ!

まあ、見所は全部なのだが、ハイライトは何と言っても大サビ前の香取くんのソロラップパート。もう、完璧というか、ここだけ聴いても盛り上がれる。なんというか…強い?

ここから、勝手に「SMAP覚醒期」と呼んでる傑作量産期に入る。

 

14. Joy!!

SMAP 後期を語るうえで、最重要楽曲であろう記念すべき 50 枚目のシングルは、香取慎吾主演ドラマ『幽かな彼女』主題化でもある楽曲、16 位。こう見ると意外と高い順位が続くのね。

編曲は毎度?の菅野よう子。おもちゃ箱をひっくり返したようなアレンジも面白いが、4分未満でスパッと終わる潔いポップスというのが、素晴らしい。そして、ライブ映えが凄まじい。『世界に一つだけの花』の一体感に似た高揚感が、そこにはある。

あと、個人的には、大サビ前のメンバー全員でソロをつなぐところでの木村くんのパートのアレンジ具合と、中居くんの歌詞変えるのか変えないのかが見所。あと、衣装がまっ黄っ黄で、恥ずかしそうなのが面白かった。めっちゃ似合ってたのに。

このカラフルな感じが、香取P?

 

15. シャレオツ

6 人時代の SMAP を感じさせつつ、それでいてオトナの風格をまとってさらに、進化、 深化した楽曲は 46 位。とにかく質の高いシングル楽曲が多く、アルバム収録漏れも多いなか、運良くこのアルバムに拾われた形。

この時期の路線として、『Mistake!』以降の大人ポップスがあって、この曲以降は、アルバム『Mr.S』の楽曲群を通って最終的に『華麗なる逆襲』へとつながっていくわけだが、まあこの手の楽曲はSMAPの専売特許ポップスであった。ここら辺が新しい歌謡曲として広がっておけば、もっとJ-popシーンに広がりが出て面白かったのだけれど、結局「若かろう良かろう」なアイドルシーンで平成は終わった感がある。残念。

細かく書くときりがないけれど、ヤッパリAメロ丸々草彅くんというのは思い切りが良いなと。覚醒期の一番の特徴は、パート割が完成されていて、それがそのままSMAPにしか歌えないことを示してるところである。約束された冒険というか、外しようのない難題というか。

ヤッパリ最高じゃない?

 

16. Amazing Discovery

『Buttery』と同じく、USJ のテーマソングとなった楽曲は、田中ヤスタカ作詞作曲の エレクトロポップチューン。順位も 26 位と上々である。

実は、入っていて意外だった曲。というのも、テレビでパフォーマンスされるのは両A面の『Top Of The World』が多く、こちらの方が人気なのではないかと思っていたからである。『Buttery』もそうだが意外とUSJ人気の層が後期には多いのかもしれない。そう考えると、タイアップと人気の関連性も少し気になるところ。

さておき楽曲はというと、中田ヤスタカ氏お得意のエレクトロポップチューン。何というか、冒険心くすぐられる楽曲で、『シャレオツ』で見せるオトナ感とは逆の、アイドルらしい “少年感” が満載である。特に大サビ前のの香取くんのソロとか。

ここら辺のキャラの変換は、SMAPの面白さだよなあと思う。

 

17. ビートフルデイ

平成現在のラストアルバム『Mr.S』の Disc1のラストチューンは、このアルバムの一曲目『Can’t Stop -LOVING-』に対応するように「S・M・A・P」とコールの入る、パーティーチューンで、29 位。

まあ、盛り上がる曲。歌詞もあまり中身のない内容だがそれはそのままオトナの余裕に繋がってるようにも思う。『Joy!!』と『シャレオツ』を掛け合わしたような感覚といってもいいだろう。

最初にも書いたが、「S・M・A・P」とコールの入る楽曲で、上手いこと一曲目『Can’t Stop -LOVING-』と呼応していて、アルバムという形態において綺麗にハマった形になっている。ある意味、この楽曲でアルバム自体は終わってると言っても良いだろう。

年代順という一見単純な曲順だが、うまく出来すぎてる感じがして、この如才ない感じがSMAPだとも思う。ほんとに人の手が加わってないのだろうか。

「てきとーのてーときーととー!」って歌ってるけども 笑 

 

18. 華麗なる逆襲

アルバムのラストを飾る楽曲は、椎名林檎作詞作曲の極上のポップス。草彅剛主演ドラマ『銭の戦争』主題歌でもあるこの楽曲は、11 位。

まあ、上手いことこの楽曲が巡り巡ってきたなとつくづく思う。前にも書いたが、この曲を含めた最後期の楽曲はもうSMAPでしか歌えないレベルになっていて、アイドルにおける代替可能な偶像性をなくしてしまってる感がスゴイ。「事実は小説よりも奇なり」という諺もあるが、17曲目ひいては49曲目までが全て “予兆” で、この楽曲で一歩先の未来を指ししているような構成にも思えてしまうのは、小生だけだろうか。

この辺りの、事故や偶然ですら、物語として前向きに取り込んで大きなうねりを、ダイナミクスとして昇華するのがSMAPというアイドルの物語の特徴なのだと思う。

どうでもいいけど、このアルバムでも最後のソロは、草彅くんなんだよな…

 

というわけで、50曲分の解説が終わったわけではあるが、まとめは次に。

いつになるやらわからんけども 笑

 

苦手なこと。

 

いかんせん、苦手なものが多い性格で、書き出すとキリがないのだが、その一つに「定額〇〇放題サービス」がある。最近、ようやく動画は慣れてきたのだが、今後しばらく慣れそうにならないのが、音楽である。

 

そもそも、音楽自体は基本的にずっと聴いていたい性格で、イヤホンとWALKMANが離せない。そして、新しい楽曲やアーティストを聴いたり、探したりするのも(年齢的な面もあってか)割と積極的な方だとは思う。むしろジャンルとしては動画よりも、その傾向は強い。

では、なぜ苦手なのかといえば、一つににCDを一つの作品として聴き込みたいからというのが大きい。“とりあえず一曲” ではなく(シングルはもちろん除く)、アルバムという流れを大事にしたい。

そしてもう一つは、自分で筋道を立てたいというのがあるのだと思う。それは(他人からは賛同が得られなくても)キチンと説明がつくということである。端的にいえば、シャッフルなどの偶然性以上に、キチンと目的意識とか聴かなければならない必然性が欲しいのである。

 

ただでさえ無秩序に、かつ無限に情報が押し寄せる世の中である。そんな中で、自分で筋道を立てて世界を区分けしていくこと、把握することを大事にして生きたい。

 

でも大きな問題として、お金と時間がかかるってのがあるんだよな、これ。あちらが立てば、こちらが云々。

ベストアルバム論 、その2の6。

 

あと、3回で終わらせる!

 

Disc 3

1. ありがとう

記念すべき 30 枚目のシングルは、素直なメッセージと素直じゃないメロディラインが絶妙にマッチしたポップチューン、順位は10位でファンの思いも届いた順位と言える。

さて、基本的にはリリース順に収録されているわけだが、この曲だけは例外的に実際より早い順位で収録されている。とはいっても、ライブで先に披露されていたり、発売が同年だったりするので細かいことではあるのだが(そういえば、SMAPはアルバムの発売がライブ開始に肉薄しすぎるグループだった!)、アルバムのおさまりとしてもちょうど良い感じもする。前にも書いた通り、どのアルバムのオープニングとも被らないし。

それにしても、初めに書いたようにこの曲メロディーラインが複雑、しかもコーラスまでついてる。というか、SMAPて割とコーラスグループ。

そして、アンコールの常連曲でもある。

 

2. Simple

ファンに寄り添う同棲ソングは、45 位。歌詞の世界観とか、ミドルチューンな曲調とか、中居くんが好きそう。

実際、このアルバムのライブ以降、ライブプロデューサーは香取慎吾氏が主導することになるので、中居くんがアルバムの曲に大きく関わったのが最後なのではないかと思われる。その『Pop! Up! SMAP』は、(次の曲も含めて)中居くんからファンに向けての、ちょっとしたサービスだったり、あるいは私的なところが垣間見えるアルバムなのかもしれない。

個人的には、大サビ前の吾郎ちゃんと草彅くんのパートが好き。

 

3. STAY

「たったの 50 年いっしょに」と歌われる、SMAP とファンの思いを繋ぐミドルチューンは、このアルバムのジャケットにも反映されている、堂々の第一位。

正直な話、 『SMAP AID』に入るまで自分はノーマークだった、もっといえば『SMAP AID』に入るまで人気曲だということにも気づかなかったし、入ったこと自体も意外だった。しかし、それ以降はこの曲のライブ映像などを繰り返しみたり、あるいは曲を聴くたびに SMAP っぽい楽曲だなというのをよく思う。

それは、一番の A メロ全部が木村くんで、それを受ける B メロの中居くん、そしてサビに言った後、二番をロハスでつないでいく...、そして要所要所では慎吾ちゃんがしっかり締める、といったパート割、ミドルチューンにしては激しめのダンスの振り付け(中居くん好み?)、あくまでも永遠ではなく、“いま” に生きようとする歌詞など、この一曲を聴けばSMAPがどんなアイドルかが分かる、もっといえば平成のアイドルの基本的な在り方みたいなことが分かるのではないかとまで思うようになった。

ちなみに、個人的にSMAPの最後のライブパフォーマンスと考えている『カウントダウン TV』でも歌われている。 このライブは本人が言っている通り、中居くんプロデュースなのだが、ファンの多くはこのパフォーマンスを受けて、この曲を一位に押し上げる大きな力になったのではないかと。

 

4. この瞬間、きっと夢じゃない

解散騒動時の『世界に一つだけの花』購買運動につながる、草彅くんの逮捕時の購買運動の対象シングルになった曲はオリンピックのテーマソングでもあった、18 位となかなかの順位。

先ほども少し書いたが、ここからはライブの主導が香取くんに変わり、その影響が少しずつ楽曲にも影響していく。とはいってもこの曲はまだ、移行期といった感じで、複雑なメロディーラインにしては、これまでの SMAP らしさを消さない程度の楽曲の完成を目指している。

楽曲としては、A メロのハモリの多様さが素晴しい。歌が下手ってよく言われるけれど、それ以上に難しい歌を選んでるっていうのが、実際なのではないかと。

あと、地味に4分満たない短い楽曲なのが個人的に嬉しい。

 

5. はじまりのうた

転調に継ぐ転調で、聴き手を翻弄するポップチューンは、『SMAP AID』でも堂々二位だった、人気曲。今回は 17 位と少し順位を落とす結果となっているが、健闘している。

個人的に、『super. modern. artistic. performance.』はプログレアルバムだと思ってて、『この瞬間、きっと夢じゃない』や『そのまま』、配信限定楽曲だった『Mermaid』などの既発曲や、次曲の『どうか届きますように』のような “王道” の曲がある一方で、この曲や『keep on』『ココロパズルリズム』『Still U』など、転調や打ち込みが特徴的なプログレ楽曲も少なくない。まあ、“Fiveシリーズ” でこう言う曲調が得意なのは証明済なので、それを普遍的なポップスに落とし込めるのかが問題なのだけれど、人気曲に昇華した『はじまりのうた』は『s.m.a.p.』のウラの表題曲ともいえよう。

スマスマで披露した映像が有名なのだが、個人的には発売された年かなんかの年末のMステで披露された記憶があるのだが、果たして。

 

6. どうか届きますように

アルバム『super. modern. artistic. performance』のラストを飾るバラードは、SMAP とファンを繋げる楽曲、順位は 40 位。

俺たちに明日はある』のところでも触れたように、この曲はSMAPの解散モキュメンタリードラマの最後のライブシーンで歌われた楽曲。ファンがどのくらいそれを意識したかはわからないが、個人的にはそちらで印象深い曲でもある。

また、『SMAP AID』にも入っているのだが、こちらはスマスマの 3.11特番で披露された影響もあるだろう。こういうことを踏まえると、意外とアルバム曲では恵まれた楽曲と言えるだろう。

楽曲としては王道のバラード…と書きたいところだが、Aメロの割と急かすようなメロディー、サビのコーラスなど、意外と単純じゃない楽曲。

 

7. チョモランマの唄

SMAP AID』で惜しくもランキングを逃したツアーのジャンクション用の楽曲は、 最後の “新曲” として音源初収録。順位も 8 位と、なぜ今まで音源化されなかったのか、不思議な楽曲である。

SMAPライブの面白さは、もちろん本編にもあるのだが、それと同じくらいに、場面転換のジャンクションの細かさや面白さにある。この楽曲はその中でも人気の曲、だった二分にも満たない楽曲だが、ここで歌われる歌詞が、エンタテイナーとしてのSMAPの矜持がギュッと詰まっていると言える。

そういう意味では、SMAP の自己紹介楽曲とも言え、解散に向けて言及できなくなっていた自身のあり方についての答えがこの楽曲に現れているのでわないか。

 

というわけで、Disc 3 の半分まで来たわけだが、次はラスト『SMAP AID』以降の楽曲を紹介することになる。つまり、ここから先はベストアルバム初収録ということになる。

実は、この間にSMAPはシングルを三枚、オリジナルアルバム『We are SMAP!』、そして『SMAP AID』を発売してるのだが、その収録曲がこのアルバムでは見事に抜け落ちてる。最後の記事では、これまでのまとめと、こうした抜け落ちてる曲をいくつか紹介するつもりだ。

ま、そのためには最後まで書かないといけないのだけれど…