長い休日

とにかく書く。

ORIGINAL LOVE 『bless You!』、転調こそ我が人生?

すでに今年は、良番豊作の予感。

まだ、『ALL THE LIGHT』消化しきれてないけど、こちらを早速レビュー!

 

1. アクロバットたちよ

とりあえず、アカペラじゃなくて安心した 笑

ただ、弾き語りから入るアルバムって、そういえばなかったなとも。個人的な感想で申し訳ないが、田島貴男氏のギターが気になるようになったのは前回の『ラヴァーマン』からで、それ以前はギター目立たないアーティストだなと、正直思ってた。

さて、とにかく転調が多い(一聴目の感想)だけど、それを感じたのがこの一曲目。ギター弾き語りから、バンドサウンド、そしてアウトロにかけて加速という、ある意味裏切りの多い楽曲。『ビッグクランチ』とまでは言わないけど、メロディーとアレンジが溢れてるのは久々だ。

勝手に、この曲を ORIGINAL LOVE版の『Band On The Run』(Paul McCartney & Wimgs)とハシャいでます。

 

2. ゼロセット

YouTube で先行公開されてた楽曲。チョロだしだったけど…(なぜ全部公開しなかったのだろうか)

とにかく、全編にわたってテンションの高い曲。そして、キーも高い曲。正直、ここまで高い必要性はあるのかとか思わんでもないけれど、これも高音が綺麗に出せる田島貴男氏だからこそ。

まあ、どこで書くか迷うけど、このアルバム全体的にオリンピックを意識してる節がある。スポーツという括りでも良いけれど、たぶん現代(コンテンポラリー)なポップスの歌詞を書こうとした時、そこを切り取るのが一番しっくりきたのかなと思いつつ、現代を切り取るポップス自体は『L』っぽい試みだなあ、とも。

PVは、『朝日のあたる道』(『風の歌を聴け』収録)を現代版にアップデートしたイメージだったけど。

 

3. AIジョーのブルース

“転調” というキーワードを決定づけた曲。リズムを刻むイントロから、歌が始まると加速、そして間奏では少し落ち着き、“AI” もといカーナビだったり、Siriを思わせるような、アナウンスが流れる。そういえば、このような試みもあるようでなかったような…

似てるような似てないようなで言えば、KIRINJIの『AIの逃避行』(『愛をあるだけ、すべて』収録)か。次の曲でラップが入ってるように、この楽曲でも入ってる。現代ポップスに必要不可欠な一要素になってきたのかもしれぬ。

いつか、KIRINJIの『愛をあるだけ、すべて』も取り上げよ。先週も出てきたし。

『G.I. ジョー』の洒落ってところまでは、分かってるけど、そもそも『G.I. ジョー』を知らないというジェネレーション悲劇。

 

4. グッデイガール feat. PUNPEE

これも、YouTubeでライブバージョンが先行公開されてた楽曲。

ラップと ORIGINAL LOVEの可能性については、『カミングスーン』(『白熱』収録)でのスチャダラパーとのコラボレーションで一度確認済み。しかし、この楽曲が、同年代でのコラボで、“あれからの渋谷系”、そしてその向こうにある“東京のポップス” をいかに描くかの分水嶺だったのに対し、今回はその先のポップスを如何に打ち出せるかが目的。

そして実際に届いたポップスは、意外とイケイケの楽曲、そして歌詞。まあ、露骨と言えば露骨だが、これもまた田島貴男氏が提示する現代なのかもしれない。

因みに、ラップパートも “転調” のうちに入れるのであれば、この曲も象徴的な楽曲。

 

5. ハッピーバースデーソング

去年発表されていた配信楽曲。長岡亮介とのライブ盤『SESSIONS』にも収録されていた。ただ、長岡氏は、録音には参加しておらず、この楽曲では、ほぼ宅録状態。(ギターソロだけ別)(長岡氏は、『ゼロセット』でギターソロ。何故?)

そもそも、田島貴男氏は宅録ベタだと思ってて(というかローファイサウンド?というやつ)、前述した『L』とか、『白熱』とかはその下手さぶりが如実に出てる気がする。まあ、なにが下手かと言えば、とにかく宅録独特の “閉塞感” が出せないところにあると思う。反対に、バンドサウンドとなると途端に楽曲、引いては田島氏本人もイキイキし出すわけで、今回もこの楽曲まではバンドサウンドでかっこいい音楽を出してる。

じゃあ、この楽曲がダメかと言えばそうではなく、かなり開かれたポップスを目指したのか、かなり良い。正直、クレジット見て、ほとんど一人で作ったのを見て驚いた。よくよく考えれば、『クレイジアバウチュ』(『ラヴァーマン』収録)のことを考えれば良かったのだが、人生逃げずにやり続けるのは大切だなと。一種のスポーツマンシップとも言える 笑

無理あるか。

因みに、個人的に逆を行くのがスガシカオ宅録はうまいが、バンドサウンドでの録音が意外と下手…な印象。いや、かっこいいのは良いんだけど。

 

6. 疑問符

ここにきて、ようやくバラード。まあ、前の曲もバラードっぽいけど、個人的には “ポップス” って感じで、少し横揺れしたいのに対し、この曲ではじっくり酔い痴れたい楽曲。そういう意味では、先週の GRAPEVINEの『こぼれる』と似た立ち位置なのかも。

この曲でも、田島氏の高音が冴え渡る。初夏を舞台とした歌詞と相まって、非常に爽やかで切ないバラードに仕上がっている。ここだけ切り取ると、『Words Of Love』(『Desire』収録)みたいな印象を受けるな…

それにしても、『疑問符』っていう名のバラードってすごいセンス。

 

7. 空気−抵抗

重力の話ではなく、いわゆる “空気を読め” の時の “空気” のはなし。まあ、サイレントマジョリティ云々の話で、歌詞の中にも “同調圧力” という言葉がキーワードとして出てくる。

今回のアルバムでは、珍しく現代を批評するような歌詞が目立つが、同時にポップスとしても両立させようとしてるのが、ORIGINAL LOVE の今回の試み。個人的には割とうまくいってると思う。が、田中和将氏にはこの手の歌詞では勝てないと、アリアリと思う。いや、どちらかというと、田中氏が異常なのだけれど。

ずっと、“転調” って言ってるけど、緩急のつけ方がハッキリしてるという方が正解のような気がしないでもない(と、この曲を聴きながら改めて思った)。

 

8. bless You !

タイトルトラック。

それにしても、この位置にタイトルトラックを持ってくるのはもしかすると初めてなのではないか。

一見、ジャズ。でもロックぽさも感じさせつつ、感触的にはポップスが残る。

「死んでもおしまいとするのは 大きな間違い 思いは残る」という歌詞は、田島氏の作詞で度々出て来るフレーズだなって思う。

 

9. いつも手をふり

しっとりしたバラード。落ち着くというよりかはもの寂しさすら感じるギター。

『ハッピーバースデーソング』のところで、どうしても閉塞感が出ないって書いたけど、そういうことを踏まえるとここまで暗い曲は『ORANGE MECHANIC SUICIDE』(『LOVE! LOVE! & LOVE!』収録)くらいしかないのでは…。ただこの楽曲にもアップテンポのバージョンもあるので、初と言っても良いような気もする。

現代を批評する歌詞が目立つなかで、個人的な感情を吐露した曲とも言える。

 

10.逆行

『疑問符』、『空気−抵抗』とともに、まったくどんな楽曲か想像つかなかった楽曲。まさか、ロックンロールとは!と、思ったら間奏で転調が入る。ほんとこのアルバム忙しい!ある意味、躁状態

それにしても、こういうアップテンポ、勢い任せの楽曲が最後に来るのは『来いよ』(『踊る太陽』収録)以来か?『帰りのバス』(『エレキトリックセクシー』収録)も、アップテンポだけど、打ち込みでガムシャラ感はほとんどないからな…

因みに、ブックレットで担当楽器に “オカリナ” って書いてあって、“?” てなったんだけど、実際オカリナソロ?がきた瞬間に、“何これダサカッケーーー!” と、『カメラを止めるな』ばりに叫んだのは忘れない 笑

ぶっちゃけ、カメラにハマってるって情報から、はじめ見た時に “逆光” の誤植だと思ってて、現物でも結局 “逆行” のままで、占星術にでもハマってるのかと思ってた。届いたら、『空気−抵抗』と同じニュアンスで、腑に落ちた。

田島氏のパンク魂なのかな、とも。

 

というわけで、10曲50分弱のアルバムレビューだったわけであるが、ブログタイトルの「転調こそ我が人生」は、ミュージシャン田島貴男のアルバムを聴いてもらえれば言いたいことはわかってもらえると思う。今回の記事に出て来るアルバムだけでもスクラップ &ビルドがヒドイから 笑

ただそんななかで、たまに今回のようなすべてを総括するようなアルバムが出て来る。

そこには、もしかすると田島氏なりのスポーツマンシップ、もしくは矜持があるのかもしれない。『ゼロセット』の中で「ここはビギナーもベテランも 同じラインに並ぶトラック」ってあるのだが、この「まだまだ若い!」というか「若さだけではお前らに負けん!」とも言うべき、飽くなき挑戦心が漲っている。(去年のPaul McCartney の『Egypt Station』とか、才能ある人は走り続けるのが世の常。)

あと、“転調” について一言加えるのは、今回のアルバム、リズムが豊かなのがその遠因なのかな、とも。キチンと調べてないけど、宅録も含めてここまでリズム隊が豊かなのは、『ラヴァーマン』くらいなのではないかと。
新しいリズムが、新たなダンスをつくる…らしいが、時代の潮流が沈んだからこそ生まれる新たなダンスと思いたい。

 

で、締めであるが、とにかくかって聴いてください。