長い休日

とにかく書く。

ベストアルバム論。その2の2。

Disc 1

 

1. Can’t Stop!! -LOVING-

言わずもがなのデビュー曲。そしてデビュー曲で 2 位というのは、最後までいじられ続けられた、SMAP らしい愛されるべきデビュー曲。 ファン投票の順位も 33 位と、まあ煮え切らない順位。

前回書いたように、まずベスト盤に収録されない曲なので、それだけでも珍しい。 曲調もいかにもアイドルという感じの、キラキラポップの元気ハツラツという感じ。ただ、こういうアイドルが減っていったなかで、レパートリーとしてこのような楽曲を持っていたことが SMAP の強みであったことは間違いない。

また、途中で童謡「きらきら星」が入っていたり、そのメロディーとサビのメロディー が重なるエンディングはかなりドラマティックである。こういうメロディーが重なったり、若しくはメロディーライン同士の追いかけをさらっと行われるのは SMAP ポップスの一つのかたちだったりする。

そういう意味でも SMAP らしい楽曲である。

 

2. BEST FRIEND

ファン投票、堂々 3 位のバラード。SMAP の楽曲のなかでも重要な意味合いをもつ楽曲の一つでもある。

重要な理由は、一つには森君の脱退時に最後に歌った楽曲であることが挙げられる。 そういう意味では彼らにとって一つの卒業ソングである。しかしもう一つには、 稲垣君復帰の楽曲でもある。そういう意味では、お帰りなさいの楽曲でもある。 簡単に言えば、メンバー同士の絆を確認する楽曲であると言えよう。

そしてそのような楽曲が、デビュー曲に続いて二番目に来てしまうあたり彼らの運が垣間見える。ちなみに二曲目にバラードが来ることも、アルバムの構成としては王道パターンとして一つあるので、そのような意味でも完成された形である。

ちなみに、有名な楽曲であるけれど、実はカップリング曲。しかも一番売れなかったシングル『負けるなBaby〜Never give up』だったりする。そんな楽曲でも収録されてしまうのが SMAP の面白さだし、魅力だし、彼らの強さだったりする。

 

3. 笑顔のゲンキ

ファン投票、滑り込み 50 位。 個人的には第一期、第二期の分岐点のシングル。

『COOL』においては、テンポをかなり落として再録。ミドルバラードになっており、 ほとんど原曲をとどめていないのだが、名曲には変わりない。個人的にはこちらの方が好き。

『COOL』にはこの楽曲より前のシングルは集録されておらず、これが分岐点と 言っている根拠。ここから SMAP は『雪が降ってきた』などの季節ものシングルや、次曲の『君は君だよ』のようなミドルテンポのバラードなどを発表していき、最終的には『$10』 で、若者を代弁するカッコいいアイドルへと変貌することになる。

 

4. 君は君だよ

ファン投票 30 位、デビュー曲より上の順位の楽曲。

このベストアルバムを語るうえでどうしても外せないのは、解散発表後に制作が決定したこと。そしてその影がどこかでちらついてしまうことだろう。 正直な話、この楽曲もこの延長線上にある気はする。そしてそれは SMAP らしい楽曲であることも多い。

歌詞の世界観は『世界に一つだけの花』同様に、個人の尊重や多様性への肯定というところで同じである。しかし、『世界~』があくまでも一市民なのに対して、この楽曲はアイドルという少し上の視点から肯定する点で少し違う。このあたりが、この時期の “揺らぎ” なのだと思う。 そして、魅力だ。

個人的には、たまに見かける昔の映像での王子様風の衣装が、割と好み。ここら辺にも “揺らぎ” が見えるのが面白い。

 

5. どうしても君がいい

ファン投票で 7 位、表題曲越えのカップリング曲、その 2。 この曲も解散発表の影に押されたが曲のように思える。ただそれだけで 7 位に入るの は至難の業なので、もともと隠れた人気曲だったのかもしれない。

アルバム自体への収録は 2001 年発売の裏ベスト『pamS(裏スマ)』にも入っている。その年のコンサートでは歌われなかったものの、2003 年のコンサートでは終盤でロック色強めにアレンジされ、大いに盛り上がった。(個人の感想です)

『君は君だよ』がアイドル目線なのに対し、こちらは同年代の男の子という感じ。 『雪が降ってきた』以降のシングルを考えれば、こちらが表題曲に来てもおかしくないが、 そこもまだ地が固まっていない “揺らぎ” なのだろう。

 

6. $10

さて、どことなーーーーーく湿っぽい楽曲が一曲目から続いてきた中で、ようやくラ イブの定番曲がやってきて、明るい雰囲気を持ってくる楽曲が来た。順位は 39 位と低いものの、この曲無しではライブアーティスト SMAP を語れない、名刺代わりの『$10』である。

先ほどから、往年のアイドル路線で進むのか、若しくは等身大の男の子路線で行くのか、 “揺らぎ” について言及してきたのだが、ここでは等身大の自嘲するお兄さんアイドル という形でアウフヘーベンされ、乗り越えた形になっている。この、一歩先へと導く視点こそが SMAP の一つの大きな武器となったし、それを掴んだのが『$10』だったと言える。

そういう意味では二枚目のデビュー曲的な意味合いも強いのだろうが、とにかくリミックスが多いのもこの楽曲の魅力。ライブバージョンも含めればそれだけでおそらく一枚のアルバムが完成する。反対に、シングルバージョンの方が披露される機会が少ないのでは?

 

7. 君色思い

さて、揺れては戻る SMAP が求めるアイドル像ではあるが、キラキラアイドル路線の最後ともいえる楽曲『君色思い』、ファン投票では 22 位。

この曲は何を差し置いても、中居ソロから始まる点に尽きる。次に、大サビ前の香取ソロ。もしかすると、バラエティ枠の両輪を担うこの二人がキラキラアイドル路線の象徴なのではないかと思う。 楽曲としては、サビでの「愛してるー」の追いかけが印象的。

 

8. オリジナルスマイル

ファン投票 4 位、ギリギリトップ 3 に入れなかったものの、シングル曲では最高順位という、ある意味勝ち抜いた楽曲といっても過言ではないだろう。5年前に発売された 『SMAP AID』では堂々の一位。楽曲自体の最高順位はオリコン 2 位だが、コンサートで歌われ続けた、愛された楽曲である。

さて、SMAP のラストライブをどこに持って行くのか、というのは色々と議論の余地を残していると思うが、個人的には 2016 年元旦の CDTV だと思っている。確かに、解散騒動後の NHK「明日へコンサート」やスマスマラストの『世界に一つだけの花』も印象的ではあるが、純粋な SMAP 演出のライブでいうと CDTV が頭一つ抜けている。そしてそこで最後に歌われたのが、何を隠そう『オリジナルスマイル』であった。 ちなみに、「明日へコンサート」の一曲目もこの曲だったりする。

このあたりが、他のシングルを抑えて 4 位に入っている理由だろう。