長い休日

とにかく書く。

ベストアルバムについて。3

 

我ながら渋い選択だと思う。

 

この選択になった理由としては、思った以上に “ファンが選ぶ” ベストアルバムというのが、意外と見つからないという一面が大きい。(思い返せば、THE YELLOW MONKEYUNICORN も あったなと反省はしつつ...。) まあでも、結成 15 周年でのベストアルバム、メジャーだけど、ヒットチャートにあまり踊らされず、マイペースにファンがついている姿勢などは CARNATION に似てるので、良い選択ではないかと。

ただそれ以上に、重要なのは “ほぼ” 年代順というところである。

 

『Best of GRAPEVINE 1997-2012』は 2012 年発売の二枚目のベストアルバムである。ちなみに一枚目は所謂コンピレーションアルバム。確か当時のインタビューに、ベストアルバムの作り方が難しく、一枚目はコンピレーションの形、今回はファンの方の投票を基にした...という発言があった気がする。

 

さて、先ほど少し述べたように、彼らの場合 “ほぼ” 年代順というところがやはりミソになってくる。というのも、このバンド、基本的にはメンバーの変遷というモノがなく(ベ ースの脱退もあるが、それも休止を交えつつだったので、そこまで劇的な印象を受けない)、またメンバー全員が作曲出来ることに加え、セッションで作曲もすることもあってか、きっちり年代順にする意義がないという面もある。前述の SMAP の場合は、メンバーの脱退に加えて、アイドル像の変化、また『世界に一つだけの花』以降のイメージ像の制約があったりと、意外とその変化は一筋縄ではいかない。

この点は、CARNATION もメンバーの脱退が楽曲に大きな変化を及ぼしていたりするので、おいそれと年代順からは離れられない事情がある。

 

では、全くそこから外れているのかというとそういうわけでもない。全二枚組 30 曲 というボリュームだが、アルバムのフェーズとしてはだいたい 4 分割される。まず、一 枚目の前半では、割とシンプルなラブソング、後半ではラブソングを軸にしつつも、より内省的に、かつ文学性を強くして行く一方、そこにロックンローラーとしての自覚が歌われるようになる。二枚目はより寓話的な歌詞が増えていきつつも、楽曲的にはセ ッション曲がありつつ、密度の濃い演奏が並ぶ。因みに、今回書きながら初めて発見したのが、一枚目はだいたい年代順、二枚目はだいたい逆年代順になっている(だいたいデビュー10 周年が接点)こと。これは狙っていることなのか、どうかははっきりとはしないけど、これらが互い違いに混ざり合いながら、進化している過程を読み取ることが出来る。

 

さて、リアルタイムで発売されていたり、または解散していたりと、他のアーティストでは、ベストアルバム後の活動の展望は見渡せないが、GRAPEVINE は 2018 年7月現在で、このあとに 4 枚のオリジナルアルバムを発表している。そして、楽曲に関して相変わらずの充実ぶりを見せているのだが、ベストアル バムの “ないまぜ” 感を引き継ぎつつ、また新しい血を入れながら進化している。この、 ベストアルバムで一つの頂点を示しつつも、通過点としてその後の活動を反映している...これも「生き様」 としてのベストアルバムの側面を見てとれるのではないだろうか。

 

その後のアルバムについては、また別の機会に語れればいいなあ(こんなのばっかり ...)。