長い休日

とにかく書く。

ベストアルバムについて。 2

2016 年の SMAP の解散。

その影響が、日本のポップスにどれだけ影響を与えるかどうかはまだ分からないけれど、確実にサブカルとメインストリートの乖離は始まっているように感じる。そして、その分岐点に SMAP の “最新” ベストアルバム『SMAP 25years』がある、と勝手に考えてる。

活動期間 25 年の集大成であり、その話題性の大きな点の一つには、ファンが 選曲をしたという点にある。もう一言付け加えるならば、SMAP に支えられた多くの人々が作り上げた、世界に一つしかない SMAP への大きな愛の花束ともいうべきものである。

 

さて、50 曲という膨大な曲数は、ベストアルバムとしてはやや食傷気味になってしまう。ただその内訳は、シングル・カップリング・アルバム曲に加え、ライブ限定で使用された楽曲など、いちアイドルにしてはバラエティに富んだ内容であり、そして彼らがどれだけ愛されているのかが分かる内容である。それでいて、「世界に一つだけの花」、「夜 空のムコウ」、「らいおんハート」など代表曲がしっかり押さえられており、ディープなファンにも、ライトなファンにも優しいベストアルバムになっているのが、マイナーなアーティストや楽曲にも目を配り、且つそのポップス化への実験を繰り返しつつも、国民的アイドルとしての自覚を背負ってきた、彼ららしい 選曲になっている。 詳しいことは改めて別記事に纏めることが出来ればいいと考えるが、このファンと共に描いた SMAP 像が一つの作品として結実しているからこそ、このベストアルバムは成功していると考える。

 

またもう一つ注目する点に、年代順がある。当方、どちらかといえば年代順よりも、 ベストアルバムならではの曲順の方が萌える性質ではあるのだが、この年代順を選ぶことによって起きるマジックもある。 というのも、20 年来のアーティストになってくると、売れ続けるためには時代時代によって否でも音楽性が変わるもの。そして時代を牽引してきた SMAP に関しては殊にそれが顕著になる。そのような中で、デビュー曲で始まって二曲目に、彼らのアンセムの一つ「BEST FRIEND」を並べてしまうあたりが、彼らの持っている運だ。この並びだけで、ファンとアーティストの関係性が書き綴る SMAP という物語の奥深さの導入が完成されている。

 

ちなみに少し脱線するが、SMAP には所謂コンピレーションアルバムというモノが 15 年ほど出ていない。ではオリジナルアルバムにシングルが全て網羅されているのかと言えば全くそのようなことはない。そしてこのアルバムとて、そのような側面ではほとんど機能していない。ここら辺のアマノジャク感も、このアーティストあってこのファンあり、という感じがする。(そのような中で「BANG! BANG! バカンス!」が入ったのもやはりアマノジャク感があって好き。)

 

ベストアルバムの面白さと難しさの一つには “選曲” にある。どういう基準で、どういう曲を選ぶのか、そしてその基準を示すのも、どこか気恥ずかしい。結果、シングルコレクションみたいなものや、ライブの定番曲を集めたものになってしまうのだろうが、ファンの声を集めれば、アーティスト自身が考える以上の、生き様が見えてくるのかもしれない。 少なくとも SMAP のこのベストアルバムには、「25年に渡りファンを魅了し続け、それでいてファンに支え続けられてきた、アイドル像」が選曲と曲順から浮き上がる。